ワイエス
このたび2012年1月20日(金)より当画廊におきまして、ジェームズ・ウェリングの新作展を開催いたします。
3年ぶり7度目の個展となる今回は、アメリカン・リアリズムの画家アンドリュー・ワイエスの作品をテーマにした新シリーズ「WYETH」を発表します。
独学で写真を学んだウェリングが最も影響を受けた作家は、写真と見間違うほど写実的でありながらも深い精神性をはらんだ絵画を描く、アンドリュー・ワイエスでした。自らの作品へのワイエスの影響を再認識したウェリングは、ワイエスが描いた場所を訪れ、写真によってその風景を再現しました。
「ワイエスが描いた場所を訪れると、不思議な現象が起こる。ワイエスは風景の一部を消したり、配置を変えたりしているので、目の前には絵画の断片が散らばっている。しかしそれでもなお、そこは間違いなく、ワイエスの絵画に描かれた風景なのだ。
ジョン・シャーコフスキー(NY近代美術館(MoMA)3代目ディレクター。写真をアートとして位置づけた)は、ウィリアム・エグルストンの作品についての記述の中で、エグルストンが撮影した場所そのものが作品となりえるだろうか、と問いかけ、その答えはノーである、なぜならエグルストンは、写真の中で、被写体であるその場所に錬金術的な何かを施しているからだ、と述べている。
この答えに異議を唱えるのは難しそうだ。
でももし、場所そのものが作品だとしたら?
もし、私たちはただそれらの場所を摺り写しているだけなのだとしたら?」
(2011 textより抜粋)
ウェリングはこれまで、風景や建築、静物など日常的断片を撮影しながら、「時間」や「記憶」という、写真の本質に関わる要素についての探求をおこなってきました。今回の新シリーズにおいても、被写体のなにかを追求するのではなく、その被写体を写すことによって写真という媒体にどのような意味を与えるかを問い、写真が本来備えている多義性を引き出しています。
また、展覧会にあわせ、カタログ「WYETH」を刊行致します。
ジェームズ・ウェリング
1951年、アメリカ・コネチカット州ハートフォード生まれ。LA在住。
カーネギーメロン大学、カリフォルニア芸術大学で美術を学ぶが、写真は全くの独学。95年よりUCLAで教鞭をとりながら、国内外で作品を発表している。2000年にはロサンゼルス現代美術館を含む3会場にて回顧展を開催。2002年にはベルギー、カナダで2度目の回顧展が開催され、ホイットニーバイエニアル(2008)をはじめ数多くの展覧会に参加している。作品はニューヨーク近代美術館、メトロポリタン美術館、ホイットニー美術館などに収蔵されている。