Untitled
このたび3月20日(木)より、当画廊におきまして横溝静「Untitled」展を開催する運びとなりました。97年の個展、98年の二人展に続いて3回目の展覧会となります今回は、新作の写真作品「Untitled」10点を展示いたします。
横溝はこれまで「自分の存在(自己)」と「自分以外の存在(他者)」との距離や関係を、写真というメディアを用いて表現してきました。それは撮影者が一方的に捉えた私的な世界を表すのではなく、被写体の自律性が入り込む事で、撮影者との間にどのような関係を作り上げるか、またその関係構造をどのように画面に反映させるかを要点としています。今展においてもその過程がさらに大きく展開されます。
「Untitled」は、人が内面(自己)と向き合っている、あるいは内面に同化して閉じている瞬間を、撮影者と被写体とのコラボレーションによって意図的に作り上げた試みです。例えば、まわりの世界が一瞬はっきりと見える、または独り言をつぶやいている事にはっと気付く、といった瞬間を人は経験することがあります。
しかし自分以外の他者はそれを認知することが出来ない為、本物の瞬間として捉えることはほとんど不可能に近いものです。そこで横溝は、被写体が意図的に内面を閉じるという働きかけを捉え、その互いの距離と受動性を画面に反映させる事によって、オーセンティシティ(真実性)の実現を目指しました。フィクションとドキュメンタリーが入り混じったその画面は、自己と他者とがそれぞれ違った距離と関係を持ち、様々な表情を見せています。
横溝 静 Shizuka Yokomizo
1966年東京生まれ、ロンドン在住。中央大学哲学科を卒業後渡英し、ロンドン大学大学院でファインアートを専攻。立体、写真、ビデオを制作。1997年ワコウ・ワークス・オブ・アートとタカ・イシイ・ギャラリーにて初個展(写真展)を同時開催。ルネッサンス期の古典絵画からの引用を用いた写真作品“LIGHT”シリーズは光と影のモチーフを用いており、”Sleeping”、”Stranger”シリーズでは人間の存在性と、時間と空間の関係をテーマとしている。2002年10月にローマ市立現代美術館で個展、2003年2月、ロンドン・テートブリテン、5月にシカゴ現代写真美術館にてグループ展に参加。