相対を越えて
このたび、7月23日(土)より、当画廊におきまして、平川典俊の展覧会を開催致します。
平川典俊はこれまで、20年以上にわたり世界各地を訪れて徹底的なフィールドワークをおこないながら制作活動に取り組み、300を超える展覧会で作品を発表してきました。彼の作品は、写真やビデオ、サウンド、テキスト、パフォーマンス、映像等さまざまな媒体をもちいており、身体性やジェンダー、メディア、宗教、政治、現代美術そのものなど、一見、きわめて広範囲かつ挑発的なテーマを扱っているようでありながらも、その根本には一貫して社会システムと個人、そして個人と自由意志についての真摯な問いかけと提言が存在しています。
東日本大震災以降、社会とアートの関係について人々の認識に変化が生じ、アートに何が出来るのか、といった言説が活発化しています。平川が2007年に制作、発表した浜岡原発をめぐる写真作品がにわかに注目を集めているのもその一端といえます。いま、人は社会にどう問いかけ、どう前進していくべきなのか? 人間の自我、社会システム、自由意志、そしてアートとは何なのか? 鑑賞者に絶えず問いかけ、認識の変革を迫る平川典俊が今回、日本の現状を踏まえた新作写真とインスタレーションを発表するとともに、1997年にアメリカのアートフォーラム・マガジンの広告を用いて制作した、人心をテーマにした作品も再展示します。この展覧会で平川は、これまで人間が自身の存在を明確にするためによりどころとしてきた二項対立や二元論、相反するものや他者との関係性をこえて、人間存在の本質である絶対的リアリティを取り戻すことの必要性を訴えます。
平川典俊
1960年福岡県生れ。1993年よりニューヨーク在住。大学で応用社会学を学び、1988年よりアーティスト活動を開始。世界各地の美術関係者と会い、直接自分の考え方を説明しながら、これまで300回を超える展覧会で作品を発表している(ポンピドーセンター、フランクフルト近代美術館、チューリッヒ・クンストハーレ、ニューヨークPS1美術館、セゾン美術館、横浜美術館、東京都現代美術館、台北市美術館他)。2008年にはアメリカを代表するコンセプチュアルアーティスト、ローレンス・ウェイナーが監督した映像作品「ミルクの中に水が存在する」、2010年には映像作品「ダーティ・アイ」(フランス/アナ・サンダース・フィルム制作)のプロデューサーを務める。現在、山口情報芸術センター[YCAM]にて、ミュージシャンのミヒャエル・ローター、ダンサーの安藤洋子とのコラボレートにより完成した最新インスタレーション「Beyond the sunbeam through trees―木漏れ日の向こうに」が公開中。