チェンジリング(取替え子)
開廊時間: 11:00〜19:00
このたび、6月15日より、ワコウ・ワークス・オブ・アートにおいて、フィオナ・タンによる個展「チェンジリング(取替え子)」を開催致します。
三年ぶり四回目の個展となる今回、展示の中心となる映像作品のタイトル「チェンジリング(取替え子)」は、小鬼が人間の子供を取替えるという古いヨーロッパの伝承を引用したものです。
中国系インドネシア人とオーストラリア人の両親のもと、東洋と西洋で育ったフィオナ・タンは、しばしば古い記録フィルムや写真を素材として作品を制作してきました。彼女の作品に一貫して見られるのは、集団や個人における文化的差異がどのように記録され、どのように人々に記憶されてきたかということへの強い関心、そして記録と物語が互いに浸食し合うことで発生する摩擦や詩性についての文化人類学的な考察です。
今回の作品では、フリーマーケットで入手した日本人学生の古い写真が素材として使われています。切り替わり続けるいくつもの肖像写真と、静止したままの一枚の肖像写真、それら無名の少女たちすべてを覆うようなボイスオーバーのナレーションが、少女、母親、祖母らそれぞれによる自分自身や人生についての独白を語り、作品全体に架空の物語が与えられています。ドキュメンタリーとフィクションを行き来し、ときに自身の文化的ルーツを探し求めるようにさまようアーティストの視線は、大きな時間のうねりの中の個人や集団の存在を浮かび上がらせ、また、確固とした記録性を持つはずの写真や映像がはらむ幻想を露呈させる力を備えています。
フィオナ・タン
1966年インドネシア生まれ、オランダ在住。映像作家。中国系インドネシア人の父とオーストラリア人の母を持つ。88年からオランダに移り、92年までアムステルダムのアカデミー、96年-97年に同地の国立美術学校に学ぶ。これまでヨーロッパを中心に個展・グループ展を
開催。2006-2007年にかけて、ヨーロッパ巡回個展 「Mirror Maker」 を開催。2007年Deutsche Borse Photography Prize受賞。ベニス・ビエンナーレ、イスタンブール・ビエンナーレ、 ICPトリエンナーレ、ドクメンタ11、ベルリン・ビエンナーレ、横浜トリエンナーレなど、これまで数多くのアートショウに参加、精力的に制作活動を続けている。2009年には第53回ベニス・ビエンナーレにオランダ代表として出品した。