New Works
このたび9月26日(金)より、当画廊におきましてクリストファー・ウィリアムス新作展を開催いたします。3年ぶりの新作展となる今回は、彼自身が選んだ写真作品8点を展示いたします。
コンセプチュアルアートの第二世代に属するウィリアムスは、自身では写真撮影をせず、彼の指示のもと他のカメラマンが撮影したものを作品に用いる、という、映画監督的なスタンスで作品制作を行っています。人物、風景、静物などを対象にした彼の写真は一見ドキュメンタリー的ですが、実際はきわめて意図的な構成のもとに制作されています。
例えば一台のカメラの写真。機種は一見高価に見えますが、実際は旧ソ連製の安いハッセルブラッドの模造品です。モノトーンであるこの“偽”の被写体を用いた写真を作るため、ダイ・トランスファー・プリントという高度のカラー技術を使い、その撮影には機材、光学、スタジオのセッティングなど高性能のものを使用。“おもちゃのパチンコの撮影にNASAの技術を使っているようなものだ。”と彼は述べています。安価な偽物に高性能の技術。彼は一つの作品の中で、異なる要素を対話させる事によって生じる新たな側面を期待しているのです。
これら一見わからない文化的背景やストーリーが織り込まれている彼の作品が問いかけるのは、固定観念の排除によって様々な見方が成立する、ということです。60年代のコンセプチュアルアートから影響を受け、写真はもちろん、映画にも深い尊敬を抱くウィリアムス。一方で彼は、美術史だけでなく政治、社会、経済の歴史からも様々な要素を汲みとっています。その結果、彼自身のフィルターを通して形成された世界観が、作品という一つのイメージへと集約されるのです。この記号化された壮大なバックグラウンドを、見る側がどこまで見極め、読み解いていけるかが鍵となります。
被写体に対するウィリアムスの姿勢はあくまで冷静です。独自の概念が内包されていながらも、その徹底した距離感が鑑賞者側の思考を多様化させ画面へと引き込んでいくのです。