New Photographs
このたび 4月10日(土)より、当画廊におきましてジェームズ・ウェリング展を開催いたします。5年ぶり4回目の個展となります今回は、1997年から2001年にかけて制作した“New Landscapes”シリーズと、光のグラデーションを創り出す“Degrades”シリーズを中心に、初期の小品も合わせて出品致します。
風景、建築、静物などの日常的断片を写真に用いるウェリングは、一貫して「写真とは何か」を問いながら制作を続けています。写真の本質を追求したその画面は、そこに写る被写体だけでは完結せず、その背後に存在する不可視なものへと広がっていきます。しかし、そこでウェリングが提示するのは、比喩ではなく現実そのものです。例えば、”Wolfsburg”シリーズに見られる何の変哲もない現在のドイツの住宅街の風景写真。そこにはナチス時代、荒野に突如建造されたこの人工都市が積み重ねてきた時間の経過の中にある、どこか違和感のある日常の風景が切り取られています。
一方で彼は、抽象画のような写真作品も創ります。光のグラデーションやある物質の表面、そして白い地に散りばめられる黒い幾何学形-これらは一体何が写っているのか、という戸惑いが鑑賞者の意識の中に起こります。ウェリングにとって重要なのは、何が写っているかではなく、写している対象を通して何が見えてくるか、という事です。写真はどこまで写真を語ることができるのか。不可視性によって多様に解釈し得るその世界は、鑑賞者の視覚と知覚を刺激し、あらゆる想像の範疇へ誘います。
James Welling ジェームズ・ウェリング
1951年アメリカ・コネチカット州ハートフォード生まれ、L.A.在住。カーネギーメロン大学卒業後、カリフォルニア大学で美術を学び、1974年、同校より芸術修士号を取得。シンディー・シャーマン、シェリー・レヴィーン、リチャード・プリンスらと並ぶコンセプチュアル・アートの旗手として高い評価を受けている。1992年ドクメンタIX出品。2000年MOCA(L.A.)にて個展を開催。