GOOOD LUCK
ワコウ・ワークス・オブ・アートではこの度2017年11月1日(水)から、ドイツのアーティスト、アンドレアス・スロミンスキーの個展を開催いたします。当画廊で4度目となる本展は「GOOOD LUCK」展と題し、アジア初公開となる全12点の作品を展示いたします。スロミンスキーは1959年に西ドイツのメッペンに生まれ、ベルリンとハンブルクを拠点に1980年代から彫刻作品やパフォーマンスの制作を続けている作家です。ドイツ、フランス、イタリアなど、ヨーロッパを中心にこれまで数多くの主要な美術館で個展が開催されてきました。
2017年の新作で構成する本展覧会では、馬蹄や聖母子像といった欧州で通俗的なラッキーチャームを題材として、それをトイレや水洗タンクに使われる簡素なポリエチレン製の素材で象った立体的なレリーフ作品を展示します。「トイレ」はスロミンスキーが近年、象徴的に扱っている題材のひとつです。作品タイトルには、それぞれ《The Horse Shoe》や《Good Luck》といった、世俗の迷信や俗言そして幸運と関わりの深い言葉が用いられ、無味乾燥とした素材に不可思議な類推を呼び込んでいます。大型の作品には「扉」の形状が隠され、謎めいた佇まいと工業的な無機質さを同時に思い起こします。
代表的なシリーズ「Trap(罠)」や「Windmill (風車)」のように、歴史と日常にありふれた主題を扱うスロミンスキーの作品は、一見レディメイドやダダイズムとの単純な関係を想起させます。しかし慎重に選ばれたモチーフは謎掛けや隠喩に富み、意味を見出す/奪うという単純な二項の駆け引きだけでは解決できない側面を作品にもたらしています。哲学的な問いかけと無意味さの魅力が同居するスロミンスキーの最新作を、ぜひこの機会にご高覧下さい。
アンドレアス・スロミンスキー Andreas Slominski
1959年ドイツ・メッペン生まれ。1986年にハンブルク美術大学を卒業し、現在ベルリンとハンブルクを拠点に活動。2004年からハンブルク美術大学で教鞭を執る。1980年代後半から日用品を模した彫刻作品や謎めいたギミックを伴うパフォーマンスの発表を続け、これまで個展が開催された主な美術館には、ハンブルク現代美術館、フランクフルト現代美術館(MMK)、ドイツ・グッゲンハイム美術館、クンストハレ・チューリッヒ、ボネファンテン美術館、プラハ財団美術館などが挙げられる。1997年ミュンスター彫刻プロジェクト、2001年第1回横浜トリエンナーレ、2003年第50回ベネチア・ビエンナーレなど、国際展にも数多く参加。作品は主に、ゲント美術館(SMAK)、MMK、FRAC、バーゼル市立美術館、ロサンゼルス現代美術館、グッゲンハイムコレクションなどに収蔵されている。本年6月にはデンマークのヨルン美術館で北欧圏で初めての個展が開催された。