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クリストファー・ウィリアムス

クリストファー・ウィリアムスは、1957年生まれ、コンセプチュアルアートの第二世代に属するアーティストである。彼は、自身では写真を撮影せず、公式記録や書物からイメージを選んだり、また、彼の指示により他の人間が撮影した写真を作品に用いるという作風を持っている。
彼の新作は、連作 “For Example: Die Welt ist schön” の完結編。このシリーズのタイトルは、ドイツの写真家のアルバート・レンガ=パッチェの写真集「Die Welt ist schön(世界は美しい)」(1928年出版)名づけられた。この写真集は、徹底的に客観的な視線によって「もの」(人、植物、建築物、風景)をクローズアップで撮影し、そのシンプルな美しさをとらえた硬質の名作である。クリストファーは、アルバート・レンガ=パッチェを始めとするモダニズムの写真とその歴史に興味があると言う。
古い世界観を知ることと同様に、現在消えつつあるモダニズムに立ち返って、それを再考することによって、写真の可能性を探り直すことが必要だと彼は述べている。クリストファー・ウィリアムスの写真作品は、人物、建物、風景、静物などを対象にしているが、それらの作品は一見すると非常にドキュメンタリー調である。作品のタイトルにしても、対象物の特徴や詳細な事実を事細かに表記している。例えば、タイプライターを撮影した写真のタイトルには、タイプライターの機種や製造メーカー、製造月日、サイズなどの詳細が記されている。写真に撮し出されたイメージは、徹底的に客観視されており、強い主観は感じられない。人はその作品とタイトルを観たとき、この写真には一体どんな意味が込められているのか、といぶかるかもしれない。事実を事実として撮していることが、観るものを不安で懐疑的な気持ちにさせる。
彼が写真作品のなかで問いかけているのは、一つの文化の中の固定したものの見方(刷り込み)を取り外すことによって、様々な見方が可能であるという事である。一つの対象物を見るときにも、それを見る人の方法論や、コンテクスト、バックグラウンドによって、一つのものはそれぞれ違う意味を持つものになる。一つの対象物(作品)のなかで、そのような思考様式の違う要素同士を同時に存在させ、そしてそれらを対話させることに、作家は興味を持っている。そして彼は、ニュートラルでドキュメンタリー調の写真の表現方法をあえて取ることによって、その内側にある思考の多様性を強調している。

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