Gallery Show
Closed : 4.29 - 5.09
常設展示
[重要なお知らせ]
恐れながらご来廊の際はマスクを着用の上、会話は最低限にお控えくださいますようお願い申し上げます。
この度、ワコウ・ワークス・オブ・アートでは4月16日から5月21日(予定)まで、ドイツ人作家グレゴール・シュナイダーの写真作品をご紹介する常設展示を行います。
※会期終了は変更になる場合がございます。
1969年にメンヒェングラートバッハ地方の都市ライトで生まれ、現在も同地域で活動を続けるシュナイダーは、閉ざされた空間への尽きない興味を契機として大掛かりな室内の改変を制作に用い、時空の接続や断絶を想起させる数々の空間インスタレーションを発表しています。その作品は美術館や広場などの歴史や公共性のある構造物を主な舞台とし、空間の変容や外部との遮断を持ちかける手法を特徴としています。プロジェクトと共に制作される写真やビデオ作品は単なるドキュメンタリーではなく、「時間は過去から未来へと蓄積される」と語るシュナイダーの思考と密接な関係にあります。
シュナイダーは2001年に当時史上最年少としてベネチア・ビエンナーレの金獅子賞を受賞。昨年2021年にはベルリンの聖マタイ協会で、十字架の形を模した箱型で真っ暗な通路型のインスタレーション作品を発表しました。今現在もドイツを代表する現代美術作家として、毎年各国の美術展で作品を展示しています。
なお、大型連休中は全日で休業を予定しております。ご来場の際はご注意ください。
[展示作品について]
《400 meter black dead end》 2006年
イタリア・ナポリのFondazione Morra Grecoで行われたプロジェクトからの8連作です。シュナイダーは旧市街に残る構造を利用し、地下に400メートルに渡る照明のない細い道を制作しました。入り口を進む毎に一切の光が奪われていき、来場者は壁伝いに手探りで道を進むことになります。「DEAD END」は行き止まりの意味で、無限に続くような一方通行の暗闇は、訪問者を精神的な臨界点まで追い詰めました。「通路」や「穴」は作家にとって重要な概念で、暗闇の広がりと同時に空間の連鎖も想起させます。シュナイダーは10代から制作活動を始め、キャリア初期にもひたすらに穴を掘るパフォーマンスなどを行っていました。
《4538KM, Deurle》 2006年
アメリカのグァンタナモに実在する米軍収容キャンプの部屋や廊下の構造を、美術館内に再現した作品です。来場者は一人でこの空間を歩いて作品を体験します。世界最高度のセキュリティが備わるこの収容所の名前は、アメリカとイスラム諸国との戦争中にも度々メディアに登場しました。作品の一部は2019年に日本で開催された「KOBE 2019:TRANS-」でも再現されています。タイトルに冠された数字はこの作品を最初に展示したデュールの美術館から、イスラム教の中心地メッカのマスジド・ハラームにあるカーバ神殿までの距離に由来しています。この作品を制作した同時期にシュナイダーは、イスラム教のシンボルである黒いキューブ状の構造体を、ヴェネチアのサン・マルコ広場に設営する計画を試みていました。計画はヴェネチア行政の反対に合い頓挫しています。
ゲッペルスの生家でのプロジェクトより 2014年
ナチス・ドイツの国民啓蒙宣伝大臣ヨーゼフ・ゲッベルスが実際に暮らした家で、2014年に行ったプロジェクトからの写真作品です。同プロジェクトは、この家が自らの出生地の近くに現存していることを知ったシュナイダーが家を買い取り、家財や目録を調べ上げた後に、建物の内部の一切を破壊して残骸を破棄するまでを一連の流れとしています。ゲッペルスはヒトラーの腹心としてプロパガンダを牽引した人物です。写真作品では、不在が強調された室内や、空間の連続性を象徴する階段などが被写体となり、初期の代表作「死の部屋」から共通して登場するシュナイダーの眼差しを垣間見ることができます。破壊前の部屋ではシュナイダー本人が食事をとったり睡眠をしたりするパフォーマンスも行われ、破壊までの一連の流れはビデオと彫刻によっても作品化されています。
→関連展覧会はこちら
より詳しく知りたい方は、オランダのWest Den Haagのオンラインプログラムで、作家スタジオや現在のゲッペルスの生家をグレゴール・シュナイダー本人が周る「Lockdown with Gregor Schneider」が全6篇で公開されています。日本では見られない実際のプロジェクト現場や制作風景が登場するなど、おすすめの内容です。
Copyright: Wako Work of Art