photographs
ワコウ・ワークス・オブ・アートではこの度、2018年3月10日(土)から5月12日(土)まで、スイス人アーティスト、ミリアム・カーンの3度目の個展『photographs』を開催いたします。過去2回の個展では主に油彩画を紹介してきましたが、今回あえてミリアム・カーンが撮る写真の魅力に注目し、写真作品を中心にした展示構成で発表いたします。
本展覧会では、カーンが屋外に描いた自作のドローイングを撮影した写真作品や、アトリエを構えるスイス・ブレガリアの自然に囲まれて撮影や現像を行った写真作品を多数展示します。フィルムカメラなど80年代のアナログ写真を用いた作品や、デジタル写真32点組の最新作を中心に、活動の初期から続ける大型のドローイング作品や、昨今世界情勢を揺るがす難民問題をテーマにした油彩作品など、多様なメディアによるカーンの世界を紹介します。
カーンは本年3月16日から始まる『第21回シドニー・ビエンナーレ』に1986年以来2度目の参加を果たし、また翌2019年には、パブロ・ピカソの《ゲルニカ》で知られるマドリードのソフィア王立芸術センターで、大規模な個展の開催が決定しています。昨年の『ドクメンタ14』では、ドイツとギリシャの両会場で発表したインスレーションが高い評価を受け、近年あらためて大きな注目を浴びているアーティストです。
70年代にニュー・フェミニズムや反核運動の影響を強く受けたカーンは、バーゼル郊外の環状道路に描いたグラフティの屋外作品で注目を浴び、その名が広く知れ渡りました。その後も、大きな布に黒鉛で描いたパフォーマンス性をともなうドローイングや、色鮮やかな水彩作品の「原子爆弾」のシリーズなど、多彩な表現方法を用いて制作を続けてきました。第21回シドニー・ビエンナーレの芸術監督を務める片岡真実は「ミリアム・カーンの作品に頻繁に描かれるモチーフは、率直、単純、そして具象的でありながら、特定の形を持たない強い衝動や感情、不可視のエネルギーをうちにひめた、言うなればマグマを蓄えた火山のように見える。」(本展カタログより)と述べています。今回展示される写真作品にも、動植物・風景・建築といった、カーンが長年描き続けてきたモチーフが登場し、彼女の絵画作品にも通じる被写体への眼差しを垣間見ることができます。写真作品という、これまであまり注目されることのなかった側面を通じて、ミリアム・カーンの作品に新たな光をあてる契機となれば幸いです。
この機会に是非ご高覧下さい。
■カタログ情報:『ミリアム・カーン photographs』 3月17日発売予定 発売後はオンラインでもご購入いただけます。
■GW期間の営業について
大型連休中も規定の休日(日月祝)に従います。特別営業はございません。期間中の開廊日は、5月1日と2日です。
■後援: スイス大使館
ミリアム・カーン Miriam Cahn
1949年スイス生まれ。バーゼルとブレガリアを拠点に活動。油彩をはじめとする作品には、ユダヤ系をルーツに持つ自身のアイデンティティーと、戦争や核問題などの具体的な社会問題に正面から向き合う強いテーマ性がありながらも、たぐいまれな色使いが独特の雰囲気を醸し、幾重にも重ねられた筆使いや背景に溶け込むような輪郭は高い抽象性を備える。 作品の収蔵先は、MMK Frankfurt(独)、Kunstmuseum Bonn (独)、Kunstmuseum Basel(スイス)、Tate Gallery (英)、MOMA (米)、国立国際美術館(大阪)など。1984年にはヴェニス・ビエンナーレのスイス館代表として展示を行った。昨年は1982年に続き2回目の選出となったドクメンタ14に参加し、アテネ会場ではドローイングと詩を、カッセル会場では複数のペインティング作品を、それぞれ展示室を広く使った複合的な展示構成で発表した。