New Work
2017年9月9日(土)より、ジェームズ・ウェリングの個展を開催致します。
2012年に開催しました「ワイエス」展以来5年ぶり8回目の個展となる今回は「New Work」と題し、最新映像作品《Seascape》(2017年)とともに、2014–2016年の「Choreograph」シリーズから1点、2014-2015年の「Meridian」シリーズから6点、2012-2014年の「Oak Tree」シリーズから3点の写真作品を展示します。すべてアジア初公開の作品となります。「写真についての写真」と評されてきたウェリング作品ですが、近年のデジタル技術の積極的な導入やプリント機材の変化による新展開が注目を集めております。この機会にご高覧いただければ幸いです。
展示作品について:
《Seascape(海景)》
この作品は、日曜画家だったウェリングの祖父が、油彩画を描くために1930年代に16mmフィルムで2日間にわたり撮影した海辺のモノクロ映像を元にしています。ウェリングはこの映像に、祖父が描いた海景の油彩画から抽出したデジタルカラーサンプルをもちいて着色をほどこし、さらに、ウェリングの兄の音楽家ウィリアム・B・ウェリングがアコーディオン演奏による音楽と効果音をつけました。岩だらけの海辺を淡々とうつしだすだけの一見シンプルなこの映像作品には、ノスタルジックな感情をともなう個人史を縦横無尽な素材選択と技術によって芸術史とクロスさせるウェリングならではの作風が凝縮されています。
《Choreograph(コレオグラフ)》
風景、ダンスパフォーマンス、建築のモノクローム写真を重ね、フォトショップの赤、緑、青のチャンネルを使い、偶然性にゆだねた結果、 アナログ写真における多重露光のような外観を獲得した写真作品です。1970年にマース・カニンガムのパフォーマンスをみてダンスに強くひかれたウェリングはその後ダンスを学んでおり、ダンス/パフォーマンスの要素を作品にも何度か反映させています。今回、このシリーズから一点を展示します。
《Meridian(メリディアン)》
ロード・アイランドにある印刷会社メリディアン・プリンティング社を訪れ、工場内を2日間にわたって撮影した写真作品です。色と彩度に手を加えたこのシリーズは、同時期に制作された「Choreograph」との類似を見せつつ、フォトショップ、インクジェットプリント、そして産業用平板印刷と写真史のかかわりにたいするウェリングの関心をあらわすものです。ウェリングはこのメリディアン社で作品や図録のプリントをおこなっています。
《Oak Tree(オークの木)》
コネチカットにある巨大なオークの木をストレートに撮影し、Epson9900で出力した写真作品です。樹齢300年のこのオークは「Diary/Landscape」や今回展示する「Choreograph」など、ウェリングの作品に何度か登場しており、1967年には水彩画も描かれています。本展ではこのシリーズから3点展示します。
ジェームズ・ウェリング James Welling
1951年アメリカ・コネチカット州ハートフォード生まれ、LA/NY在住。カーネギーメロン大学卒業後、カリフォルニア大学で美術を学び、1974年、芸術修士号を取得。1981年にNYのメトロ・ピクチャーズで個展を開催し、C・シャーマン、S・レヴィーン、R・プリンスらと並ぶコンセプチュアル・アートの旗手として高い評価を受けた。主な表現媒体である写真作品の多くは抽象と具象、感情、郷愁、過去と現在といった要素を重層的にはらみ、個人史と写真史が交差する地点で成立している点に特徴がある。アナログやデジタル、フォトグラムやフォトショップ操作等多様な手法をもちいて制作を続ける様は本人曰く「腹話術師のよう」。欧米各国の美術館で個展が開催されており、今年初めには回顧展がベルギーとオーストリアを巡回した。作品は主にニューヨーク近代美術館、メトロポリタン美術館、ホイットニー美術館などに収蔵されている。