Recent Works
ワコウ・ワークス・オブ・アートでは2016年7月23日より、オランダのアーティスト、フィオナ・タンの個展を開催致します。
当画廊での2年ぶり8回目となる今回の個展は「Recent Works」と題し、日本未公開の映像作品2点を中心に構成されます。
今回のメインの展示となる《Ghost Dwellings III》は、〈Ghost Dwellings〉三部作のうちのひとつで、フィオナ・タンが2013年、震災後の福島を訪れて撮影した映像作品です。同シリーズのI、IIでは、財政破綻をきたしたアメリカのデトロイト市と、2008年のリーマンショックの影響によって廃墟同然となったアイルランドのコークの住宅街で撮影をおこなっています。
《Apocalypse》は、フランスのアンジェ城の中にある中世期最大のタペストリー「黙示録のタペストリー(Tenture de l’Apocalypse)」を接写した映像作品です。フランスとイギリスが領有権や王位継承をめぐって争った100年戦争のさなか、1373年から10年の歳月を費やして織られたこのタペストリーに描かれているのは、新訳聖書に出てくるヨハネの黙示録の物語です。タペストリーの絵柄の細部をとらえた映像にオーバーラップして水平方向に流れる黙示録の赤い大小のテキストが、緊急速報や株価のティッカーを思わせます。
■関連展覧会情報
IZU PHOTO MUSEUM (静岡)
Fiona Tan Ascent|フィオナ・タン アセント
2016年7月18日(月・祝)—10月18日(火)
この度IZU PHOTO MUSEUMでは、映像作家として国際的に評価の高いフィオナ・タンの個展を開催いたします。タンは近年日本国内において、金沢21世紀美術館(2013年)、東京都写真美術館、国立国際美術館(2014-15年)と、3度の大規模な個展を開催してきました。今回のIZU PHOTO MUSEUMでの個展は、富士山をモチーフとした新作《Ascentアセント》を中心に据えて構成されます。
巧緻に仕立てられたインスタレーションとして知られるタンの作品は、アイデンティティ、記憶、そして歴史を探る試みと言えます。またそれらのテーマを主題としながら、「視線」そのものについての問いを内包しています。それは私たちが映像を通して、周囲の世界に向ける視線であると同時に、鏡のようにときに私たちを見つめ返すような映像からの視線でもあります。本展では、映像インスタレーションと写真インスタレーションの2パートによって構成される《Ascentアセント》を中心に、初公開作品数点を含む展示構成でご紹介いたします。
(IZU PHOTO MUSEUM リリースより)
フィオナ・タン Fiona Tan
1966年インドネシア・ブカンバル生まれ。中国系インドネシア人の父親とスコットランド系オーストラリア人の母親のもと、幼少期をオーストラリアで過ごし、88年にオランダへ移り住む。2009年のヴェネツィア・ビエンナーレでオランダ館代表をつとめた他、これまで横浜トリエンナーレ(2001)、ベルリン・ビエンナーレ(2001)、ドクメンタ11(2002)、イスタンブール・ビエンナーレ(2003)、ICPトリエンナーレ(2003)、シドニー・ビエンナーレ(2006)、ヴェネツィア建築ビエンナーレ(2010)など、数多くの国際展に参加。近年は日本においても注目度が高まり、金沢21世紀美術館(2013)、東京都写真美術館(2014)、国立国際美術館(2014-2015)で個展を開催している。2016年1月、初の長編映画『History’s Future』がロッテルダム国際映画祭でプレミア上映され、タイガー・アワード等にノミネートされた。現在、静岡のIZU PHOTO MUSEUMにて開催中の個展では、富士山を題材とした77分の最新映像作品『Ascent』を展示している。